マゼランペンギン、春のコロニー [海の生物]
マゼラン海峡に臨む南米大陸最南端の都市、チリのプンタ・アレーナス近くにあるマゼランペンギンのコロニー。春の繁殖期で、既に抱卵中のメスも見える。NASAのアイスブリッジ(IceBridge)作戦の調査チームが、フライトのなかった10月30日に訪れ撮影した。
アイスブリッジ作戦は南極の氷床の変化を空から観測する大規模な調査活動で、2009年から6年の予定で行われている。
Photograph by Maria-Jose Vinas, NASA
新種シーラカンス、テキサスで発見 [海の生物]
アメリカ、テキサス州で採取されたシーラカンスの骨化石を詳しく調査したところ、約1億年前の新種と判明した。
シーラカンスは原始的な形態を残した世界最古の魚類の1つで、動作が遅い。長らく絶滅したと考えられていたが、1938年にアフリカで生存が確認された。全40種以上のうち、現生種は2種のみである。3億2000万年前とほぼ同じ姿で、「生きた化石」と呼ばれている。
新種「Reidus hilli」は、テキサス州フォートワースの芸術家ロバート・リード(Robert Reid)氏の功績を称えて命名された。リード氏は1980年代後半に自宅近くで頭骨化石を発見、同州のサザンメソジスト大学に寄贈した。研究者チームは、下顎部にあるシャベル状の特徴的な骨板からすぐさまシーラカンスと特定。
「一目見た時点で判断できた」と、研究を率いた同大学の古生物学者ジョン・グラフ(John Graf)氏は話す。しかし、最近の再調査まで、誰も新種とは考えなかった。
◆近縁種より小型
Reidus hilliは1億年前の白亜紀に生息しており、テキサス州で発見されたシーラカンス化石として最も年代が若い。これまで同州では約2億年前、三畳紀の化石が最も新しかった。
グラフ氏によると、成魚は体長50センチ以上と推測される。当時のシーラカンスとしては平均的なサイズだが、近縁種は大型化が進んでいたという。
例えば、平均体長が1~3メートルの仲間も存在したようだ。なお、現生種は約2メートルまで大きくなる。新種を分析したグラフ氏は、絶滅種から現生種への過渡期に当たると主張している。
研究の詳細は「Historical Biology」誌で8月2日に発表された。
タグ:シーラカンス
サメの末路、ワイルドライフ2012 [海の生物]
2012年度ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:「環境へのまなざし」部門、佳作「サメの末路」(The End of Sharks)
台湾の高雄市にある東港魚市場で、冷凍されたサメのヒレが次々とさばかれて行く。世界的に需要が旺盛な高級食材、フカヒレとして出荷するためだ。
写真家のポール・ヒルトン(Paul Hilton)氏は、現場での印象を次のように語った。「ヘルシーとは言えない食材をこれほど大量に入手するために、一体何匹のサメが殺されたのだろうか。思わずゾッとした」。「環境へのまなざし(The World in Our Hands Award)」部門の佳作となったこの写真は、人間が自然環境とどう関わっているか告発する作品と言えよう。
専門家によると、中国で膨らむ中産階級のグルメ需要を満たすため、年間最大1億匹にも上るサメが捕獲されている。しかもその大半は、ヒレを切り取られ、生きたまま海中に投棄されるという。ヒレを失えば、もはや死を待つほかない。
タグ:サメ
ペンギン、ワイルドライフ2012 [海の生物]
2012年度ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:大賞「バブル・ジェット・ペンギン」(Bubble-Jetting Penguins)
氷のすき間に向かって急浮上するコウテイペンギン。17日に発表された、フランスのヴェオリア・エンバイロメント社主催2012年度「ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー」コンテストで、大賞に輝いた一枚である。
写真家のポール・ニックレン(Paul Nicklen)氏は、「ナショナル ジオグラフィック」誌の取材で南極のロス海に潜った。ニックレン氏はカナダのバフィン島でイヌイットとともに幼少時代を過ごし、極地で生き抜く術を会得。シュノーケリングしながら、エサを探しに行ったペンギンたちが戻るのを待ち構えた。
「水面まで急浮上する姿は、まるで空中戦を繰り広げる戦闘機のようだった」とニックレン氏はナショナル ジオグラフィックのルナ・シール(Luna Shyr)氏に語った。「陸に飛び出すとクチバシで地面を押して立ち上がり、ヨタヨタ歩くいつものペンギンに戻った。めったに見られないシーンだったね」。
審査員のデイビッド・デュビレ(David Doubilet)氏は、「バブル・ジェット・ペンギン」について次のようにコメントしている。「極限の地で生きる姿が感動を呼ぶ。果てしない混沌と完璧な構図の両立に魅了された。実際何が持ち上がっていたのか? いつまでも目を離すことができない」。この写真は「水中の世界(The Underwater Worlds)」部門でも第1位に選ばれている。
ロンドン自然史博物館と「BBC Wildlife Magazine」誌が共催するこのコンテストは今年で48回目。Webサイトによると、「世界各国の最高レベルの自然写真」が結集する。毎年、各国の写真家で構成される審査団が、18部門、数万点の応募作から優秀作品を選考する。
タグ:ペンギン
カリブ海で深海の発光生物調査 [海の生物]
バハマ沖で最近実施された調査から、深海発光生物の秘められた生態が明らかになった。
研究チームは有人潜水艇「ジョンソン・シー・リンク(Johnson-Sea-Link)」に乗り込み、ナマコ、イソギンチャク、竹サンゴ(bamboo coral)、ヤドカリなど、深度1000メートルの世界に生息するさまざまな発光生物を収集。特に海底に住む生物がどのような生物発光を行うのか、実験室でさまざまな調査が行われた。
研究チームの一員でアメリカ、フロリダ州にあるノバサウスイースタン大学海洋学センターの海洋生物学者タマラ・フランク(Tamara Frank)氏は、「深海生物は、生物発光の色を識別して食べ物を選んでいることが判明した」と話す。
「さまざまな色の光を見て、“これは好き”、“これはいらない”といった判断を下している可能性がある」。
例えばコシオリエビの一種は、研究チームが潜水艇の中から観察する中、緑に光るイソギンチャクに座り、「時々、長いはさみで何かをつかみ取っては口に運んでいた」とフランク氏は説明する。「イソギンチャクを食べているようには見えなかった。イソギンチャクに付いた別のものを食べていたのだろう」。
研究チームの一員ソンケ・ジョンソン(Sonke Johnson)氏は、かすかな青い光に気付いた。光を放っていたのは通りすがりのプランクトンで、流されて次々とイソギンチャクにぶつかってくる。青い光や紫外線に敏感なコシオリエビは、緑のイソギンチャクをちゃっかり利用して、おいしそうな青いプランクトンを見分けているのではないかと、チームは推測している。
このコシオリエビの仲間は、長さ2.5センチの体部にかなり大きな眼を持ち、深海の生物発光を感知する能力があるという。
また、体長40センチほどに成長する甲殻類の一種、ダイオウグソクムシの複眼は弱い光への感度が極めて高い。輝板(タペータム)という後部の反射層に光が反射して、正面から見ると眼が輝いて見える。
深海生物は、一般的な海中生物とは異なり、典型的な青色ではなく緑色に発光することもわかった。「海底まで下りると、海流の動きや有機堆積物(デトリタス)の影響で、青は見えにくくなるのだろう。緑の方が遠くまで届く」とフランク氏は話す。
引き上げた深海生物の視覚を研究する際には、暗い場所で保管しなければならない。「海面の光のレベルでは失明してしまう」。
深海生物の調査におけるもうひとつの難題は、海面との温度差だ。特に熱帯地方の場合、引き上げた生物が高い水温に耐えられない可能性がある。「死ぬ原因は水圧だと思っている人が大半だが、実は水圧の変化にはある程度対応できる。深海は摂氏4度から7度の世界だ。28度の海面に来れば、油で揚げられたような熱さだろう」。
深海底に絞った生物発光の研究は数少ない。この特徴が深度1000メートルではもともと珍しいのか、バハマ沖に特有の状況なのかは解明されていない。「他の地域でも調査を実施して、今回の成果が当てはまるかどうか確認する必要がある」。
しかし、フロリダ・アトランティック大学のハーバーブランチ海洋研究所(Harbor Branch Oceanographic Institute)では、予算削減のため、調査で使った潜水艇の母船を売却してしまったという。「潜水艇ジョンソン・シー・リンク(Johnson-Sea-Link)が使えなくなったのは、本当に残念だ」とフランク氏は話している。
今回の研究結果は、「Journal of Experimental Biology」誌オンライン版に9月5日付けで発表された。