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米動物園のリカオンが男児を襲った理由 [動物]

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悪夢のような出来事だった。アメリカ、ペンシルバニア州のピッツバーグ動物園は5日、記者会見を開き、同州に住む2歳の男児がリカオンの群れに襲われて死亡したと発表。悲劇は4日、男児が11頭のリカオンが飼われている柵の内側に転落した直後に発生した。


 特に攻撃的で男児を噛んだまま離さなかった1頭は警察官が射殺、残りは隔離されている。バーバラ・ベイカー(Barbara Baker)園長は、「このような悲惨な事故が起きたことを心苦しく思う」とコメント。動物園は営業を自粛していたが、6日から再開する予定。

 なぜ11頭は男児を襲ったのだろうか? リカオンの行動を理解するため、2人の専門家に取材した。ロンドンの動物学研究所(Institute of Zoology)の上級研究員ロージー・ウッドロフ(Rosie Woodroffe)氏と、アリゾナ州ツーソンにあるリカオン保護団体(African Wild Dog Conservancy)のキム・マクリーリー(Kim McCreery)氏だ。

◆リカオンとはどのような動物ですか。

キム・マクリーリー氏: オオカミのように家族の群れで暮らします。両親と年長の兄弟が小さな子どもの世話をし、ねぐらには子守りもいます。ほかの肉食動物の群れと異なり、小さな子どもが先に餌を食べます。社会構造は人間の家族とよく似ています。

◆なぜピッツバーグ動物園のリカオンは、柵の内側に落ちた男児を襲ったのでしょうか?

ロージー・ウッドロフ氏(メールで回答): 悲しく衝撃的な出来事です。目の当たりにした人たち、特に男の子の御家族にとっては、耐えられないほどの恐怖だったでしょう。私自身も同年代の子どもがいる母親です。その胸中は容易に想像できます。

 しかし、まず伝えたいのは、野生のリカオンは人間に危害を加えないということです。人間を襲った事例を聞いたことがありません。研究地だったケニアでも、ヤギの世話をしたり学校に徒歩で通う子どもが日常的にリカオンと遭遇しますが、現地の人たちは決して怖がりません。

 私自身、何度も歩み寄ったことがありますが、脅威を感じたことは一度もありません。また一方、大胆不敵で好奇心が旺盛という特徴も備えています。

 リカオンの視点に立って今回の出来事を想像してみましょう。「柵の中に何か落ちてきたぞ。とにかく行ってみよう! おっかなくはなさそうだけど動いている。噛んでみようぜ! おっと飼育係が気をそらそうとしている。でも、こっちの方が目新しいし、ずっと面白い」。実際はどうだったかわかりませんが、そう外れていないと思います。

◆野生だったらどうでしょう? 動物園のリカオンとは違う行動をとったと思いますか?

マクリーリー氏: 飼育下にある動物が野生の動物と違う行動をとることはあります。ただし、今回の悲劇に関し、確信を持って言えることは何もありません。動物園とアフリカでは事情が全く異なります。

◆リカオンについてほかにコメントはありますか?

ウッドロフ氏: 結局、リカオンは捕食動物であり、獲物を追う本能が備わっています。野生のリカオンは人間に興味がありますが、距離を詰めると怖がる。しかし、飼育下では、この恐怖心は格段に小さいと思われます。毎日のように近距離で人間を見ているためです。

 ただし、今回の出来事が捕食を目的とした攻撃だったかといえば、非常に疑わしいと考えています。

 もし本当に小さな子どもを殺して食べたかったのであれば、すぐさま大きなダメージを与えたと思います。これだけ大きな群れなのです。野生だったら獲物を数秒でばらばらにし、数分で平らげてしまうでしょう。



薄氷の暮らし [動物]

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2012年度ワイルドライフ・フォトグラファー・オブ・ザ・イヤー・コンテスト:「動物と環境」部門賞、「薄氷の暮らし」(Living on Thin Ice)

 氷盤の上で休む1頭のホッキョクグマ。ノルウェー北部スバールバル諸島の海で初夏に撮影。写真家オーレ・ヨルゲン・リオデン(Ole Jorgen Liodden)氏は、「空と海の配分、氷の形、クマの後姿とその足跡。すべて申し分ない」とコメントしている。

 ヨルゲン・リオデン氏は、思いもよらないほど急速に失われている自然環境について、皆が考えるきっかけになればと願う。特に、多くのホッキョクグマの将来が危ぶまれている。北極圏の氷は毎年薄くなっており、消えてしまうかもしれないのだ。



米で急増のリス、投薬で産児制限 [動物]

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アメリカ全土でハイイロリスが大量発生している。あらゆる手を尽くして樹上のリスたちの勢いを抑えようと、産児制限を試みる研究者もいる。


暖冬と豊かに実ったエサの影響で、特に東海岸と北東部、中西部で小型哺乳動物のハイイロリスが急増している。キュートな外見に似合わず周囲の環境をめちゃくちゃにしてしまうハイイロリスは、農作物を食い荒らし、建物の配線をかみ切る。皮を剥がされた木は、枯死にはいたらないまでも深刻な被害を受ける。

 増殖を抑えるには、産児制限が最善の選択肢だ。しかし、毎日喜んで経口避妊薬を服用するリスはいないし、子宮内避妊器具(IUD)はそれほど小さくない。彼らの子作りをストップする特効薬はあるのだろうか?

 数十年前からオジロジカなどの産児制限に関する研究が続けられており、リスにも応用できそうな選択肢が2つある。ワクチンを投与して性ホルモンの生成を抑制する、またはコレステロール値を下げる方法だ。性ホルモンはコレステロール分子からつくられる。 1回の接種で何年も効果が持続するワクチンは期待できそうだ。

 アメリカ、コロラド州フォート・コリンズにある野生生物調査センター(National Wildlife Research Center)の元研究者クリスティ・ヨーダー(Christi Yoder)氏は、「ただし、捕まえるには手間暇かかるし、リスの負担になる」と話す。しかも、人件費を含めて1匹あたり50ドル(約4000円)以上の費用が必要だ。

◆ヒマワリの種に薬をコーティング

 残るは2つ目のレシピだ。産児制限の味付けを施したごちそうでリスを誘惑すればいい。サウスカロライナ州ノースチャールストンのクレムゾン大学で薬の投与法を研究するグループが、まさにこの方法を試みている。使っているのはディアザコン(DiazaCon)というコレステロール低下薬だ。

 研究チームは大学内で暮らすリスに投薬する前に、1年の準備期間を設けた。天然資源学科(Division of Natural Resources)の責任者グレッグ・ヤロー(Greg Yarrow)氏は、「ホルモン値が最大になるタイミングを知るために、リスを捕まえて採血し血液検査を行った」、と説明する。

 この研究は学問のためだけではない。クレムゾン大学は10年近くリスに苦しめられている。食い荒らされて失った木が100本以上におよび、撤去、新たな植樹や手入れに100万ドル(約8000万円)以上を費やした。

 研究チームは2012年、ハイイロリスが独り占めしている16カ所に餌箱を設置し、ディアザコンをコーティングした好物の黒いヒマワリの種を与え始めた。ディアザコンは実験用のリスでテストしたことはあるが、野生のリスに使用するのは今回が初めてだ。

 コーティングでピンク色に染まった種は、おそらく味も少し甘い。それでも、リスは「気にしていないようだ」とヤロー氏のもとで研究する大学院生で、プロジェクトのリーダーを務めるクリスティーナ・ダン(Kristina Dunn)は話す。「餌箱のそばに座り、ひたすら食べ続けていた」。

◆ピンク色のリス

 研究チームはあと1年与え続けて、行動に関する情報や生物学的なデータを可能な限り集める予定だ。そして、投薬の効果を分析し、種を食べた個体やその捕食者に副作用がないかどうかを調べることにしている。

 作業のほとんどは面倒なデータ収集だが、簡略化のための対策は講じてある。ディアザコンに混ぜた毒性のない染料は、リスの腹部をピンクに染めてくれる。投薬されたかどうかは一目瞭然だ。「大学内はもうピンクのリスだらけ。大学のテーマカラーに合わせてオレンジにすればよかった」とヤロー氏は口元をゆるめた。

タグ:リス

最古の霊長類はネズミ大で樹上性 [動物]

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現在知られる範囲で世界最古の霊長類は、“上昇志向”を持っていたらしい。ネズミほどの大きさで、約6500万年前に存在したプルガトリウス(Purgatorius)については、過去数十年間わずかな歯と顎の断片しか手がかりがなかった。しかし、このほど古生物学チームがこの生物種の足関節(足首)の骨を特定した。その関節の可動域の広さは、プルガトリウスがすばしっこく木登りに長けていたことを示唆している。


「足関節の骨のみだが、これらはプルガトリウスのものだと強く確信している」。イェール大学の古生物学者スティーブン・チェスター(Stephen Chester)氏はアメリカ、ノースカロライナ州ローリーで先週開かれた古脊椎動物学会の会合においてこのように語った。「これは、この霊長類が主に樹上生活を送っていたことを示す初めての直接的な証拠だ」。

 プルガトリウスが生きたのは、恐竜が絶滅した次の時代に当たる暁新世の初期だ。そのころ、植物は果実をつけ始めた。最初期の霊長類が木に登っていたという新事実は、霊長類と花を咲かせる被子植物とが互いを利する形で共に進化したとする説を裏付けるものだとチェスター氏は言う。「植物は種子を拡散するために、霊長類にとって魅力的なものを実らせ始めた。それと時を同じくして、霊長類は樹上生活により特化し始め、木の枝にのぼって果実を採取できるようになった」。

 当時、哺乳類の多くは地上生活をしていたため、木登りの能力はこの生物種にとって食物資源をめぐる競争上の強みになっただろうとチェスター氏は述べる。「おそらくこれら初期霊長類の進化的成功に寄与したと思われる」。

◆封印された過去を開く

 今回特定された足関節の骨は、カリフォルニア州バークレーにあるカリフォルニア大学古生物学博物館のウィリアム・クレメンス(William Clemens)氏が、過去40年間にわたってモンタナ州北東部で採取した多くの化石の中にあった。しかし、同州のパーガトリー・ヒル(Purgatory Hill)という場所から見つかったプルガトリウスの化石は、これと比較できる化石記録が乏しかったため、以前なら特定することは不可能だったとチェスター氏は言う。

「以前は、これら初期霊長類のことがあまりわかっていなかった。歯があったことはわかっても、そこまでが限度だった」と話すチェスター氏によると、共同研究者でフロリダ自然史博物館の古生物学者ジョナサン・ブロック(Jonathan Bloch)氏の仕事が足関節の骨を特定するカギになったという。

 ブロック氏は、周囲を覆う石灰岩をギ酸を使って溶かすという丹念な作業によって、他の多くの初期霊長類の化石骨格を取り出すことに成功してきた。「ブロック氏が取り出した信じられないほど完全な骨格が、これまでなかったロゼッタストーンのような役割を果たしている」とチェスター氏は言う。「今では一部分のみの骨を集めたものの中から、初期霊長類の骨をはっきりと特定できるようになった」。

 探すべきものが明確になった今、研究チームは引き続きこれまでに見つかっている化石の中からプルガトリウスの他の骨を特定し、この生物の姿勢や動作について手がかりを得たい考えだ。

 カリフォルニア大学バークレー校のクレメンス氏は、この足関節の骨を「驚くべき発見」と評し、この骨が見つかった化石発掘現場から哺乳類時代の黎明期についてのさらなる手がかりが見つかることを期待している。「霊長類の起源に加えて、(暁新世の前に起こった)大量絶滅の原因に関する他の重大な謎を解明するため、引き続きモンタナ州で調査を行う計画だ」。


パキスタンで斬新なユキヒョウ保護策 [動物]

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パキスタンなどに生息するネコ科の動物ユキヒョウは、絶滅の危機にさらされている。主に狩猟が原因で、同国では450頭まで激減したとも推測されている。崖っぷちに追い詰められたユキヒョウを救うため、1人の専門家が型破りのアイデアを思い付いて注目を集めている。ユキヒョウを家畜に分類するという逆転の発想だ。


 とはいえ、ユキヒョウがニワトリのように文字通り飼いならされているという意味ではない。ナショナル ジオグラフィックのエマージング探検家シャフカット・フセイン(Shafqat Hussain)氏は6月、ワシントンD.C.の協会本部で開催された「探検家シンポジウム(Explorers Symposium)」で、「飼い猫に例えるとき、私は野生という言葉との対比で表現している」と説明した。

 フセイン氏のアイデアの背景には、ユキヒョウと人間との関係が変化している事情がある。ヒマラヤ山脈の生息地には、遊牧民がどんどん入り込んでいる。2010年に実施した糞の調査から、ギルギット・バルチスタン州のユキヒョウは、エサをヒツジやウシなどの家畜に7割も頼っている事実が判明した。遊牧民の中には、家畜被害の仕返しにユキヒョウを殺す者もいる。

「今や伝説と化したこの野生動物を、どのようにとらえればよいのだろう? われわれは野生という言葉に、人間社会や家畜との接点がない自立した存在という意味を込めている。彼らの生活は本当にそうなのだろうか?」。

「もちろん違う」とフセイン氏は言い切った。

◆住民の支援

 つまり、保護区に押し込めて人間社会から隔離すれば事足りるとする考え方は間違っているとフセイン氏は言う。多くの場合、そうした方法によって生活圏を分断された遊牧民は、その分の放牧地を失うことになる。そこでフセイン氏は、ユキヒョウに襲撃されても生活が成り立つよう遊牧民を支援することを提案している。

 これはまさにフセイン氏が10年以上前から続けてきた取り組みだ。フセイン氏は1999年、ユキヒョウプロジェクト(Snow Leopard Project)を立ち上げる。ユキヒョウが生息する国を対象に、家畜を殺された農民の損害を補償する保険制度だ。

 これまでの補償額は7000ドル(約55万円)近くになり、囲いなどの設備改良に1万3000ドル(約100万円)が投じられた。ユキヒョウの個体数はあまり変わらないが安定しているようだとフセイン氏は話す。

◆反対意見も

 しかし、反対意見もある。

 ユキヒョウの専門家で保全生物学の研究者でもあるジェリー・ロー(Jerry Roe)氏は、家畜に分類しても遊牧民との争いは解決できないし、ユキヒョウのためにもならないとメールでコメントしている。「たとえ定義を変えても、遊牧民は害獣であるという見方を変えないだろう」。

◆ユキヒョウとの共存

 反対意見には根拠がないとフセイン氏は考えている。少なくともパキスタンの住民たちには、「先祖代々の恨みも、殺してしまえという気持ちも」ない。「損害を補償してもらえればそれでよく、ユキヒョウの排除には興味はない」。

 モハメド・イブラヒム(Mohammed Ibrahim)氏もその一人だ。パキスタンのクラバサン(Krabathang)で、スコヨー・クラバサン・バシンゴ保全開発機構(Skoyo Krabathang Basingo Conservation and Development Organization)のトップを務め、自身も15頭のヤギを所有している。ウルドゥー語の通訳を介した電話取材で、ユキヒョウのことは心配していないと述べた。フセイン氏のプロジェクトのような保険制度のおかげで、家畜を失っても補償される見込みがあるからという。

 しかも、ユキヒョウが人間を襲った例は無く、人間から引き離すより自身のアイデアの方がはるかにうまくいくとフセイン氏は確信している。「村人たちに不満がなければ、家畜として扱う方が簡単だしね」。



ネズミは歌い、新しい調べを覚える [動物]

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ネズミのオスは自分の歌の調子を変えることができるという。

 アメリカ、デューク大学の神経生物学者エリック・ジャービス(Erich Jarvis)氏と同僚のグスタボ・アリアガ(Gustavo Arriaga)氏、エリック・シュウ(Eric Zhou)氏が発表した。

 ネズミの“歌”は2005年に初めて確認されていた。ミズーリ州セントルイスのワシントン大学で神経生物学と解剖学を研究するティモシー・E・ホーリー(Timothy E. Holy)氏と、プログラマーのゾンシェン・グオ(Zhongsheng Guo)氏の発見である。

 ネズミの声は非常に高音で人間には聞こえないので、ホーリー氏らは録音をスロー再生して分析した。オスはメスに求愛する際、メロディーとフレーズの繰り返しで構成される曲を歌うと明らかになった。チューチュー鳴くだけでなく、多彩な音節が含まれ、繰り返し登場するテーマもあった。

 ジャービス氏のチームはさらに踏み込んだ調査を実施。マウスを訓練すると、さまざまな調子で歌うようになった。ヒトやイルカ、クジラなど、限られた種だけが持つ能力だ。

◆ネズミの“歌合戦”

 ジャービス氏らの研究では、血統が異なる大人のオス2匹をメス1匹と同じ空間に置いた。8週間にわたり実験を続けた結果、オスは互いに歌う高音や低音をまねて、それぞれの歌が変化したという。

 ネズミの歌の研究は、発話や言語障害の解明につながる可能性がある。ネズミはイルカやクジラに比べ、繁殖や飼育下での調査がはるかに容易だ。遺伝子操作を伴う研究にも適している。

 また、そもそもネズミはなぜ歌うのだろうか。メスをうっとりさせる以外の目的もあるかもしれない。ジャービス氏によると、敵意などの感情を伝えている可能性があるという。「下等だなんてとんでもない。意外と頭が切れるんだ」。

 研究の詳細は「PLoS ONE」誌で10月10日に発表された。

タグ:ネズミ

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