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パキスタンで斬新なユキヒョウ保護策 [動物]

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パキスタンなどに生息するネコ科の動物ユキヒョウは、絶滅の危機にさらされている。主に狩猟が原因で、同国では450頭まで激減したとも推測されている。崖っぷちに追い詰められたユキヒョウを救うため、1人の専門家が型破りのアイデアを思い付いて注目を集めている。ユキヒョウを家畜に分類するという逆転の発想だ。


 とはいえ、ユキヒョウがニワトリのように文字通り飼いならされているという意味ではない。ナショナル ジオグラフィックのエマージング探検家シャフカット・フセイン(Shafqat Hussain)氏は6月、ワシントンD.C.の協会本部で開催された「探検家シンポジウム(Explorers Symposium)」で、「飼い猫に例えるとき、私は野生という言葉との対比で表現している」と説明した。

 フセイン氏のアイデアの背景には、ユキヒョウと人間との関係が変化している事情がある。ヒマラヤ山脈の生息地には、遊牧民がどんどん入り込んでいる。2010年に実施した糞の調査から、ギルギット・バルチスタン州のユキヒョウは、エサをヒツジやウシなどの家畜に7割も頼っている事実が判明した。遊牧民の中には、家畜被害の仕返しにユキヒョウを殺す者もいる。

「今や伝説と化したこの野生動物を、どのようにとらえればよいのだろう? われわれは野生という言葉に、人間社会や家畜との接点がない自立した存在という意味を込めている。彼らの生活は本当にそうなのだろうか?」。

「もちろん違う」とフセイン氏は言い切った。

◆住民の支援

 つまり、保護区に押し込めて人間社会から隔離すれば事足りるとする考え方は間違っているとフセイン氏は言う。多くの場合、そうした方法によって生活圏を分断された遊牧民は、その分の放牧地を失うことになる。そこでフセイン氏は、ユキヒョウに襲撃されても生活が成り立つよう遊牧民を支援することを提案している。

 これはまさにフセイン氏が10年以上前から続けてきた取り組みだ。フセイン氏は1999年、ユキヒョウプロジェクト(Snow Leopard Project)を立ち上げる。ユキヒョウが生息する国を対象に、家畜を殺された農民の損害を補償する保険制度だ。

 これまでの補償額は7000ドル(約55万円)近くになり、囲いなどの設備改良に1万3000ドル(約100万円)が投じられた。ユキヒョウの個体数はあまり変わらないが安定しているようだとフセイン氏は話す。

◆反対意見も

 しかし、反対意見もある。

 ユキヒョウの専門家で保全生物学の研究者でもあるジェリー・ロー(Jerry Roe)氏は、家畜に分類しても遊牧民との争いは解決できないし、ユキヒョウのためにもならないとメールでコメントしている。「たとえ定義を変えても、遊牧民は害獣であるという見方を変えないだろう」。

◆ユキヒョウとの共存

 反対意見には根拠がないとフセイン氏は考えている。少なくともパキスタンの住民たちには、「先祖代々の恨みも、殺してしまえという気持ちも」ない。「損害を補償してもらえればそれでよく、ユキヒョウの排除には興味はない」。

 モハメド・イブラヒム(Mohammed Ibrahim)氏もその一人だ。パキスタンのクラバサン(Krabathang)で、スコヨー・クラバサン・バシンゴ保全開発機構(Skoyo Krabathang Basingo Conservation and Development Organization)のトップを務め、自身も15頭のヤギを所有している。ウルドゥー語の通訳を介した電話取材で、ユキヒョウのことは心配していないと述べた。フセイン氏のプロジェクトのような保険制度のおかげで、家畜を失っても補償される見込みがあるからという。

 しかも、ユキヒョウが人間を襲った例は無く、人間から引き離すより自身のアイデアの方がはるかにうまくいくとフセイン氏は確信している。「村人たちに不満がなければ、家畜として扱う方が簡単だしね」。





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