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ミクロラプトル、後足の翼は「旋回」用 [恐竜]

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いったいなぜ、地面を走るための体をもつ恐竜に、4枚の翼と、羽毛の生えた長い尾があったのだろうか? 1億3000万年前に中国の森で狩りをしていたミクロラプトルという小さな肉食恐竜の解剖学的構造の謎を、古生物学者はずっと考えてきた。

 そしてついに、分析して答えを見つけたという研究が発表された。ミクロラプトルはドロマエオサウルス科の恐竜で、サイズはカラス程度だが、空中制御の名人だったのだという。滑空していたのか羽ばたいて飛んでいたのかはわからないが、後ろ足の翼があることで急旋回が可能だった。

 ロサンゼルスにある南カリフォルニア大学のマイケル・ハビブ(Michael Habib)氏は、「空気力学的には、前の翼だけの場合と比較して、後ろ足の翼を使うことにより旋回のスピードが33~50%速かった」と説明している。

 共同発表者であるロサンゼルス郡立自然史博物館のジャスティン・ホール(Justin Hall)氏は、ミクロラプトルが暮らしていた、食うか食われるかの世界においては、旋回のスピードが少し速くなるだけで「大きなアドバンテージ」になっただろうと述べている。

「翼幅が5メートルもあるような動物も空を飛んでいた時代に、捕食性の恐竜に囲まれて生きていた、カラスほどの大きさの動物だ。旋回の速さの33%の違いは、生死を分けるものだっただろう」。

◆奇妙な構造の理由

 ミクロラプトルは、その長く伸びた前足の翼から、羽ばたくか滑空して飛ぶことができたと想像される。しかし、後ろ足のがっしりとした短い翼は、これだと空中では揚力よりも抗力を生み出したと考えられ、ミクロラプトルが飛んでいたという先の考え方に反しているようにも見える。これに対しハビブ氏とホール氏は、揚力がポイントではなかったのだと主張する。

 ホール氏は、ミクロラプトルの飛行をカヌーと比較して、「カヌーの方向を直ちに変えようという際はたいてい、パドルを水に突っ込んで大きな抗力を生み出すのが最良だ」と述べている。

 飛行に影響する回転の力は、ヨーイング(上下が軸)方向、ローリング(前後が軸)方向、ピッチング(左右が軸)方向に大別できるとハビブ氏は説明する。ミクロラプトルの後ろ足の翼はその大きさと位置から、この3つの力すべてを増大させたが、旋回に役立てられたのはヨーイング方向とローリング方向の力だけだった。不意の急降下につながりかねないピッチング方向の余分な力はどう処理されたのか。

「尾に生えた羽毛の“うちわ”が、後ろ足の翼によるピッチングを制御するのにまさに最適な位置にあることがわかった」とハビブ氏は述べている。

◆飛行の起源

 ミクロラプトルの解剖学的構造の問題は、進化の歴史におけるより大きな問題に結びついている。飛行と高所での生活はどちらが先だったのか。地面で暮らしていた恐竜が、進化によって飛ぶようになってから、木々の間で暮らし始めたのか、それともその逆だったのか。

 ミクロラプトルはあの恐ろしいヴェロキラプトルと同系統であり、小さいながらも同じく凶暴な捕食恐竜だった。胃袋から哺乳類の骨が見つかった例や、丸のみしたと思われる鳥が胃袋から丸ごと見つかった例がある。

 鳥を食べていたというこの事実は、ミクロラプトルが少なくとも生活の一部を木の上で送っていたことを示唆する。しかし、それがどれくらいの長さだったのかという問題は未解決だ。ミクロラプトルはその翼を滑空するのに使っていたのだろうか。それとも、地面から飛び上がる際に使ったのだろうか。いずれにせよ空中制御は重要だったのだとハビブ氏は言う。

 後ろ足の翼を急旋回に使っていたという考えからは、現在の猛禽類の一部にみられる飛行中の足の使い方についても洞察を得られるのではないかと2人は言う。

「ワシはなぜ足を突き出して飛ぶのか。見た目はへんだろう?」とホール氏は言う。「実は、ワシの足はたくさんの羽毛があり、大きな抗力を生み出す。このことから、ワシは意図的に、コントロールのために足を突き出して飛んでいるのではないかと考えられる」。

 羽毛は骨のようには保存されず、化石の記録にのこるものがほとんどないため、恐竜から鳥への進化がいつどのように起きたのかを正確に結論づけることは難しい。しかしハビブ氏とホール氏は、ミクロラプトルの解剖学的構造が、その進化の途中にあるのではないかと考えている。

 この研究結果は、ノースカロライナ州ローリーで先月開かれた古脊椎動物学会の年次会合で発表された。



吸血鬼のような牙を持つ小型恐竜を発見 [恐竜]

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体がトゲに覆われ、発達した牙を持つ小型の恐竜が見つかった。最新研究によると、牙を持つ彼らが食べていたのは植物だという。ペゴマスタックス・アフリカヌス(Pegomastax africanus)と名付けられたこの恐竜は体長60センチほど、ヘテロドントサウルスの仲間で、約2億年前に生きていた。


ヘテロドントサウルス属(Heterodontosaurus)は、小型で牙を持つ恐竜のグループで、「恐竜時代の初期に他の恐竜たちの足元をちょろちょろしていた」と研究著者のポール・セレノ(Paul Sereno)氏は話す。セレノ氏はシカゴ大学の古生物学者で、ナショナル ジオグラフィック協会付き探検家でもある。

 ペゴマスタックス・アフリカヌスは、ヤマアラシのようなトゲに覆われた体と、オウムの嘴に似た丸っこく突き出した口を持ち、見た目は「奇妙な鳥」のようだったと考えられるとセレノ氏は言う。ただし、その牙は鳥というより、ブタに似た生物のペッカリーやミズマメジカなど、現代の草食哺乳動物が自衛や餌探しのために持つ牙に似ている。

 セレノ氏によると、ペゴマスタックスは、超大陸パンゲアが南北に分離し始めたころに、アフリカ南部の森林地帯の川沿いに生息していたとみられるという。

◆風変わりな恐竜の復元

 セレノ氏は、謎の多いヘテロドントサウルス属の包括的研究を準備する過程で、ハーバード大学にあった化石の中からペゴマスタックスを発見した。化石は1960年代に南アフリカ共和国で採集されたものだ。

 鋭い牙を何に用いていたのか探るため、セレノ氏はこの新発見の恐竜の顎と歯を復元し、それを肉食恐竜および現代の牙のある草食哺乳動物のものと比較してみた。その結果、ペゴマスタックスの牙は、ミズマメジカやペッカリーが自衛や交配相手をめぐる争いのために持っている牙とよく似ていることが明らかになった。

 ペゴマスタックスの牙を顕微鏡で観察したところ、牙のエナメル質に仲間内の争いによるものとみられる摩耗や破損が見つかり、上の見解をさらに裏付ける結果となった。

 またセレノ氏によると、ペゴマスタックスの上下の顎に生えていた奥歯は、餌の植物を噛み切るために、ハサミの刃のように互いを研磨しあっていたと考えられるという。

◆時代を先取りしていた小型恐竜

 アメリカ、ワシントンD.C.にある国立自然史博物館の古生物学者ハンス・ディーター・スーズ(Hans-Dieter Sues)は電子メールでの取材に対し、ヘテロドントサウルスの新種が見つかったことは「それほど注目に値する」ことではないとしながらも、「しかし、(セレノ氏が)この奇妙な小型恐竜のグループ全体を包括的に見直したことは、画期的な功績だ」と述べている。スーズ氏は今回の研究には参加していない。

 スーズ氏が特に評価するのは、セレノ氏が「これらの恐竜が餌をどのように噛んでいたかを解明した点であり、このことは彼らが臼歯のような変わった歯を持つ理由を理解する上で役立つ」。

 また今回の研究により、ペゴマスタックスの発達した顎の構造は、時代を先取りしていたことが明らかになったとセレノ氏は指摘している。このような顎の構造は、数百万年も経ってから再び哺乳類にみられるようになった。

 イエネコほどの大きさしかないこの恐竜がもしも現代に生きていたら「ちょうどいいペットになっていただろう。人間を噛まないように訓練できればの話だが」とセレノ氏は笑った。

 今回の研究成果は、10月3日付で「ZooKeys」誌オンライン版に発表された。



タグ:恐竜

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